卓球の日本一決定戦!2023年の「全日本卓球」は五輪代表争いも絡む、熾烈なトーナメントに
卓球の日本一を決める「全日本卓球選手権大会(以下、全日本卓球)」が、2023年1月23日(月)~29日(日)に東京体育館で開催される。シングルスやダブルス、ジュニアの部と全7種目を行い、各種目にプロアマ約200人もの選手が出場する、新春恒例のビッグトーナメントだ。
また、今大会は2024年パリ五輪の代表選考会の一つに指定されており、この熾烈極まる選考レースの行方も気になるところ。大会の成績ごとに付与される選考ポイントを巡り、トップ選手たちがしのぎを削っている。
そこで、混戦が予想されるシングルスに目を向け、注目選手をピックアップ。日本卓球界の頂上決戦を制するのは果たして?
まずはパリ五輪代表の選考ポイントについて、簡単におさらいしておきたい。これは男女共にシングルス代表2人を決めるための取り組みであり、2022年3月から約2年がかりで行われている。選手たちは対象となる複数の大会に出場していき、そこで収めた成績ごとにポイントを獲得。その通算数が多い上位2人が代表に選出されるというものだ。
「全日本卓球」開催前の時点(1月10日付)で、女子と男子の獲得ポイント数上位8人は以下の通り。
■女子
1位:早田ひな(164pt)
2位:伊藤美誠(117.5pt)
3位:平野美宇(109pt)
4位:木原美悠(106pt)
5位:芝田沙季(102pt)
6位:長崎美柚(97pt)
7位:石川佳純(87pt)
8位:佐藤瞳(69pt)
■男子
1位:張本智和(179pt)
2位:篠塚大登(113pt)
3位:吉村真晴(95pt)
4位:戸上隼輔(90pt)
5位:及川瑞基(86.5pt)
6位:吉山僚一(66pt)
7位:田中佑汰(65pt)
8位:横谷晟(60pt)
男女共トップの早田、張本が抜きん出ているが、2位以下は接戦。若手の台頭やベテランの盛り返しなどがあり、いくら実績のある選手でも油断はできない。「全日本卓球」では1位に60ptを付与。2位に50pt、3・4位に40pt、5~8位に25pt、ベスト16に10pt、ベスト32に5ptが与えられる。
日本代表のメンバーは、男子は張本智和を筆頭に、戸上隼輔、及川瑞基、横谷晟、丹羽孝希の5人。女子は伊藤美誠、早田ひな、長崎美柚、木原美悠、佐藤瞳で臨む。エースの活躍はもちろん、新星のブレークにも期待したい。
それぞれ「全日本卓球」優勝歴がある(写真左から)石川、平野、早田、伊藤
T.LEAGUE/アフロスポーツ
前述の選考ポイントの上位8人は、スーパーシードとして大会後半から登場。女子は、うち3人がトーナメントの左の山に、5人が右の山に入った。左の山に入ったのは前回覇者の伊藤と、昨年世界選手権に初出場した成長株の長崎と木原。3人とも勝ち進めば、伊藤と長崎が準々決勝で当たり、その勝者と木原が準決勝で戦う。
常に追われる立場にある伊藤は他の選手からのマークが厳しく、ここまでの国内大会ではたびたび苦戦を強いられてきた。伊藤は今勢いに乗る“Wみゆう”こと長崎・木原を上回り、今回も決勝に進めるか?一方の長崎、木原にとっては、“ネクストブレーク”の評価を脱し、真価を証明する格好の機会となる。
対して右の山では、早田のいるブロックが激戦区に。平野と芝田、さらには成長著しい張本の妹・張本美和も集まった。抜群の安定感を誇る早田とはいえ、勝ち抜くのはそう簡単ではない。特に昨年11月の選考会で伊藤、芝田、そして早田を下し優勝した平野が壁になるだろう。果たしてベスト4に残るのは誰か。
そして選考ポイントで現在7、8位につけている石川と佐藤は、勝ち進めば準々決勝で対戦する。ここまで不本意な戦績が続く石川は世界ランク8位の意地を見せたいところだが、昨年の世界選手権でも活躍したカットマン・佐藤の粘り強さは脅威的。両者とも選考レースでこれ以上遅れを取りたくない状況だが、どちらかは必ず8強止まりとなる過酷な組み合わせとなっている。
覚醒のエース・張本(写真右)や、再起したベテラン・吉村(写真右)らに注目
T.LEAGUE/アフロスポーツ
男子は、世界ランキング1位の樊振東ら中国勢を破るなど、昨年覚醒を果たした張本が優勝候補。2018年大会での最年少優勝以来、「全日本卓球」では苦戦続きだったが、逆境での強さを取り戻したエースの5大会ぶりの戴冠に期待がかかる。
そんな張本のいるブロックには、選考ポイントで現在6位の吉山と8位の横谷、そして世界的名手の丹羽孝希が入った。18歳の吉山は昨秋の選考会で、前回の「全日本卓球」王者・戸上を破った次世代のホープ。横谷は張本と共に昨年の世界選手権代表として戦った、こちらも実力者である。彼ら新鋭の勢いや丹羽の経験値を張本が上回れるか、好カードの連続となりそうだ。
選考ポイントで2位につけているのは張本の同級生の篠塚。昨秋の選考会で張本とフルゲームの大接戦を演じた“ネクストブレーク”の筆頭だが、篠塚のいるブロックもまた、ポイント3位の吉村、5位の及川がそろう激戦区となった。前回大会で張本を破るなど復活を遂げたベテラン・吉村、そして前々回王者の及川と、誰が勝ち上がってもおかしくはない。
そして前回王者の戸上と、昨秋の選考会で準優勝だった田中が、勝ち進めば準々決勝で相まみえる。ドイツ・ブンデスリーガに参戦するなど海外で研さんを積む二人は、共にバックハンドの鋭さが持ち味。対戦となれば、両ハンドを巧みに操るハイレベルな攻防に期待したい。
※記事の情報は全て1月10日時点のものです。
※長崎美柚の崎は「たつさき」。
取材・文=井上潤哉
放送情報
全日本卓球選手権2023
「女子ダブルス」「男子ダブルス」準決勝、決勝
「女子シングルス」「男子シングルス」準決勝、決勝
放送日時:2023年1月28日(土) 、1月29日(日)
チャンネル:NHK BS1、NHK総合