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【週末エンタメ】『ラ・ラ・ランド』の監督×ブラッド・ピットの話題作!ゴージャスでクレイジーな1920年代のアメリカ・ロサンゼルスを再現

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『ラ・ラ・ランド』(2016年)において史上最年少の32歳でアカデミー賞監督賞を受賞したデイミアン・チャゼル監督。現代の映画界を代表する監督とブラッド・ピット、マーゴット・ロビーらハリウッドのスターキャストがタッグを組んだ『バビロン』が、2023年2月10日(金)より公開される。

ここでは、1920年代の豪華けんらんなハリウッドを舞台裏から浮かび上がらせた極上のミュージカルの見どころを解説していく。

『セッション』『ラ・ラ・ランド』で開花!チャゼル監督ならではのビターな群像劇

新人女優のネリーと映画製作を志すマニーの恋模様がベースに描かれる
(C) 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

チャゼルが映画監督としてデビューする前から15年にも及ぶ構想&リサーチを行い、満を持して世に放つ『バビロン』。1920年代のロサンゼルス、“黄金時代”と称されたゴージャスかつクレイジーなハリウッドを舞台に、ビッグになることを夢見る若者や映画スターたちの狂乱の日々、そして栄枯盛衰が描かれる。

スターを目指す新人女優のネリー(マーゴット・ロビー)は、サイレント映画の大スター・ジャック(ブラッド・ピット)を主役とした華やかなパーティーで、映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)と運命的に出会い、次第に心を通わせていく。

怖いもの知らずのネリーが自由奔放な振る舞いと美貌で周囲を魅了し、スター街道を駆け上がる一方、マニーもジャックの助手として映画界での第一歩を踏み出す。順風満帆な時を過ごす中、ハリウッドに変革の波が押し寄せようとしていた…。

これまでに、ジャズドラマーを目指す青年が鬼教師のパワハラ指導にめげず奮闘する出世作『セッション』(2014年)や、ロサンゼルスで出会った役者の卵とジャズピアニストのほろ苦い恋模様を描いた『ラ・ラ・ランド』といった作品を手掛けてきたチャゼル監督。試練を味わいながらも夢を追う若者の物語は、彼にとってまさにおはこと言えるテーマであり、本作でも主人公が味わう幸福と苦難を巧みなストーリーテリングで紡いでみせた。

ブラッド・ピットもさすがの存在感!華やかで刹那的な1920年代ハリウッドの背景

サイレントスターの多くがトーキー 到来の波にのまれることに…
(C) 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『バビロン』の舞台となる1920年代はハリウッドの黎明期。20世紀初頭、映画産業の中心地はもともとニューヨークだったが、1910年代から制約がなく撮影に適した気候の西海岸へと移り、農村だったハリウッドにスタジオが乱立。ハリウッドは急速に映画産業の街へと成長していった。

アメリカ全体を見ても、第1次世界大戦後の不況から脱却すべく大量消費社会へと突入し、経済、文化などが大きく花開いた“狂乱の20年代”と称されるイケイケムードの時代。当時のハリウッドは、ドラッグ、暴力、セックスが横行していて、スキャンダルの都といわれるほど。映画自体にも規制がなく、暴力、性描写も野放しだったが、この反動から1930年代には“ヘイズコード”という厳格な規制が敷かれることになってしまう。

また技術の発展も目覚しく、長編商業映画では“世界初のトーキー ”とされることも多い『ジャズ・シンガー』(1927年)など、サイレントから音の入ったトーキー映画が主流へと移り変わっていた頃。こういった要因からスターの多くは没落していき、その代わりに新たなスターが誕生していった。

ネリーのモデルのクララ・ボウも時代の変革で落ちぶれていった役者の一人
(C) 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

本作のキャラクターも実在したスターがモデルとなっており、ネリーはサイレント末期のセックスシンボルといわれたクララ・ボウを思わせる。そんな自由奔放で破天荒な人物像を、ロビーは持ち前の伸び伸びとした芝居で、チャーミングに演じている。

ピット演じるジャックもまた、かつては大スターだったもののトーキーへの移り変わりを機に人気を失ったジョン・ギルバートをはじめ、ダグラス・フェアバンクス、ルドルフ・ヴァレンチノといったサイレント時代のスターたちをほうふつとさせる存在。うたげに興じる一方、ふと物悲しげな表情ものぞかせるなど、見事な演技を見せている。

1920年代のハリウッドの人間模様はドラマ性の高さから、古くは『サンセット大通り』(1950年)や『雨に唄えば』(1952年)、最近では『アーティスト』(2011年)など、数多くの名作を生み出しており、映画のテーマとしてはまさに鉄板と言える題材なのだ。

リアルかつオーバーに再現された1920年代のギラついた空気感

細部にまでこだわり抜いて、1920年代をスクリーンに浮かび上がらせていく
(C) 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『バビロン』ではそんなやりたい放題で退廃的な1920年代の雰囲気が、リアルかつ過剰とも言えるほどのゴージャスさとともに再現されている。

その撮影は規格外で、例えばセットは1920年代の建築規格や技法、建材を可能な限り用いて、時代に忠実に建てられるこだわりぶり。全て手作りの衣装もまた約250人のキャストに対して7,000着以上も用意されたというから驚きだ。

劇中の映画撮影シーンも1920年代当時のスタイルを模倣。30人のスタント、10人の馬乗り、30人のフルオーケストラをはじめ700人近いキャストを動員し、大規模な戦闘の振り付けや多くの爆発を盛り込んだ戦争映画シーンでの大規模な撮影は、リハーサルだけで4日間を要したそうだ。

さらに音楽はチャゼル監督の大学時代からの盟友である作曲家ジャスティン・ハーウィッツが担当し、1920年代のジャズバンドの楽器を用いつつ、時代を超越したさまざまなジャンルを融合させ、エネルギッシュかつワイルドで享楽的な空気感にあふれたサウンドをつくり上げている。そこにわい雑で妖艶なダンスが加わり、パーティーのシーンを筆頭に、目を奪うような飛び切りきらびやかな世界がつくり上げられている。

アカデミー監督賞最年少受賞のデイミアン・チャゼル渾身の1作『バビロン』
(C) 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

世界中のどの都市よりも早いスピードで発展したロサンゼルス・ハリウッド。時代の雰囲気を『バビロン』で追体験すれば、人々が貪欲に富と名声、快楽を求めたその理由が分かることだろう。

文=ケヴィン太郎

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『バビロン』

2023年2月10日(金)より全国ロードショー
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