【9月1日は防災の日】災害時にも使える!アウトドアアイテム特集
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9月1日は年に一度の「防災の日」。約100年前、1923年の9月1日に関東大震災が発生。死者・行方不明者は10万人を超え、火事や津波などの二次被害も起きました。未曽有の被害をもたらしたこの日は、各自治体や家庭、企業などでそれぞれの備えを見直し、防災意識を高める日とされています。
日本は自然災害が多い国。内閣府は、災害時の想定としてひとりあたり最低3日分の飲料水と食料を備蓄するよう推奨しています。
このほかにも準備しておいたほうがよいものはたくさんありますが、必ずしも防災専用アイテムである必要はなく、アウトドア用品やキャンプギアで代用できる場合も!
今回は、水害の多い沖縄県で防災士として活動している稲垣暁さんに、災害時にあると便利なアウトドアアイテムと、それぞれの上手な使い方を教えていただきました。
スマホの充電にも対応。家庭にひとつあると、災害時に大いに役立つ。
アウトドアで、音楽や料理を楽しむときに便利なポータブル電源(蓄電池)。高価なものが多い発電機に比べ、ポータブル電源は比較的安価で手に入るのも嬉しいポイントです。
災害が起こった直後、何よりも重要なのが家族間の安否連絡と情報収集。ポータブル電源があれば、災害時に命綱となるスマホの充電切れを防げます。また、扇風機や電気毛布など簡易的な冷暖房器具を稼働させることも可能です。
「ポータブル電源の価格は、出力と蓄電量によって異なります。パソコンや扇風機を動かす程度なら小電力のものでじゅうぶんですが、ホットプレートなどは多くの電力が必要となります。どのような使い方をしたいのか、事前にシミュレーションしてから購入しましょう」(稲垣さん)
防災のためには日ごろからフルに充電しておくことが大切ですが、充電しっぱなしにしておくと電池の劣化につながるため注意を。太陽光で充電できるタイプもあります。
稲垣さん私物の自動車用インバーター。シガーソケットに接続すれば、車中避難時に電源として使える
生活空間を分けて避難生活のストレスを軽減…「テント、タープ」
テントとタープを組み合わせた様子。災害時には家族のプライバシーを守る生活空間となる
アウトドアレジャーに欠かせないテント。日帰りキャンプでは、より簡易的で組み立てが簡単なタープも人気です。
「最近では、自宅が倒壊するなどして物理的に住めない場合や二次被害の恐れがある場合を除き、在宅避難が推奨されています。避難所では衛生面や防犯面など多くの心配がありますが、自宅だと家族のプライバシーが保たれ、被災者のストレス軽減にもつながるなど多くのメリットがあるからです。自宅避難や車中避難では、テントやタープがあるととても便利です」と稲垣さん。
たとえば、庭やベランダにテントを設置するだけでもうひとつの部屋のように使えます。余震時に落下の危険性があるものや、ゴミ・排泄物など室内に置いておきたくないものの一時保存場所として利用できます。
また、実際に被災者の方々からは「車中避難生活でタープが役に立った」という声が多く聞かれたそう。車に隣接してタープを設置し、折りたたみイスやテーブル、簡易コンロなどを置いて食事やくつろぎの場とすることで、車中空間と分けて使えます。生活空間を区切ることは、長引く避難生活のストレスをやわらげることにも役立ちます。
稲垣さんが、防災訓練でハッチバックにタープを設置した様子。陽ざしや雨を防げるうえに、車中空間も広く感じる。入口を締めれば立ったまま着替えも可能
室内にものやガラスが散らばり居住できない場合、一時的に庭にテントやタープを設置して避難生活を送ることも想定できます。テントは体を休めて睡眠をとる場所。タープ部分は食事スペース、または物置場などゾーン分けすれば、テント内を汚さず清潔に保てます。
稲垣さんが阪神大震災に被災した際に支給されたキャンプストーブ。約30年経ったいまもしっかり稼働する
災害時の備蓄品として推奨されているカセットコンロ。じつはキャンプストーブと呼ばれるガスバーナータイプのコンロのほうが、性能がよいものが多く、場所もとらないのでおすすめです。
「屋外で使用しても風に強く、火力の微調整がしやすいのが特徴です。ただしガスのカートリッジは必ず冷暗所で保存し、絶対に自動車内に放置しないよう注意を。破裂の恐れがあります」(稲垣さん)
カセットコンロもキャンプストーブもない場合は、炭タイプのBBQコンロも活用できます。着火剤がなければ、細く切った牛乳パックを。1×7cmの長さで1分間燃焼します。マッチやライター、炭もストックしておきましょう。
上開きタイプは冷気が逃げにくい。最新の商品では、数日間氷が溶けないほど高性能なものも
停電時に冷蔵庫や冷凍庫の食品保存に役立つクーラーボックス。頻繁に開閉すると庫内の温度が上がりやすくなるため、災害時には大小の複数のサイズのものを使い分けるとより便利です。
「水を入れて凍らせたペットボトルをクーラーボックスに入れておくと、長時間冷気を保てます。万が一を想定し、日ごろから冷凍庫に何本か常備しておきたいですね。災害時は食料の入手が困難となります。傷みが早い食品から順に食べていき、なるべく無駄にしないよう心がけましょう」(稲垣さん)
“エコノミークラス症候群”の予防に…「コット、寝袋、エアーベッドなど」
車の後部座席をフラットにし、寝袋を設置した様子。体を伸ばして休むことができる
「熊本地震では災害関連死が多く見られました。その大きな原因がエコノミークラス症候群。特に車中避難ではじゅうぶんな対策が必要です」と稲垣さん。
長時間同じ姿勢を取り続けると、体中の血行が滞り血栓ができやすくなります。この血栓が肺の血管を詰まらせ、肺塞栓症などを引き起こし死に至る現象がエコノミークラス症候群です。
地面からの熱気や冷気を防いでくれる簡易ベッドの「コット」。軽量金属のフレームと合成繊維でできており、分解すればコンパクトに
特に車中避難では座位の姿勢が続くため、足を下げている時間が長くなり、ふくらはぎなどに血栓ができやすくなることがわかっています。できる限り座席をフラットにし、休憩中や睡眠中はエアーベッドやコットなどを使って、水平の姿勢を保つようにすることが大切。過ごしやすい季節であれば、テントと寝袋などを活用して車外で睡眠をとるのもひとつの手です。
今回紹介したもの以外でも、自宅にある身近なものが災害時に役立つことがあります。園芸用品もそのひとつ。停電時や断水時にもっとも困るのがトイレですが、自宅に庭があればスコップなどで穴を掘り、一時的に排泄物を処分することもできます。上から腐葉土などをかぶせておけば消臭効果も。
また、キッチンにあるラップも万能アイテム。食事の際、皿にラップをまいて使えば皿洗いの水が節約でき、けがをしたときには包帯代わりにもなります。アルミホイルは、いも類やソーセージなどを包んで焼くと火の通りが早く、燃料の節約に。
万が一に備え、災害時にも使える家庭のアイテムを確認しておきましょう。この機会に、家族とも話し合っておきたいですね。
教えてくれたのは
稲垣暁
防災士・社会福祉士。「災害プラットフォームおきなわ」理事。新聞記者として活動していた1995年、阪神・淡路大震災で被災。退職後に妻の故郷である沖縄県に移住し、自身の経験をもとに防災士としての活動を始める。東日本大震災、熊本地震などの被災地にて支援活動を行うとともに、各地で防災啓発活動に取り組む。