防災

“スーパーで手軽に買える”が鉄則! 防災のプロが教える「ローリングストック」実践術

目次

地震が相次ぎ、何かと不安を覚える昨今。もしもの時のために常日頃から高めておきたいのが防災への意識だ。中でも、日々の暮らしに取り入れやすい防災術として近年、注目度を高めている「ローリングストック」をご存じだろうか?

「ローリングストック」とは簡単に言うと、普段から少し多めに食材や加工品を購入し、使った分だけ新しく買い足していくことで、絶えず一定量の食料を家に備蓄する方法だ。

「最近は“ローリングストック”というフレーズがだいぶ浸透してきたように思います。とはいえ『非常食を備えるんでしょ?』という認識の方はまだまだ多いですね」と語るのは、防災士・防災共育管理士・整理収納コンサルタントの松永りえさん。

「防災収納」を提唱する松永さんに、生活の基本である“日々の食べる物”にフォーカスしながら、暮らしにローリングストックを取り入れるこつなどを教えてもらった。

暮らしの延長線上にある防災術! ローリングストックのメリットとは?

常温保存可能な牛乳やオーツミルクなども被災時に役立ちそう

2016年の熊本地震で被災し、「快適な暮らしは安全の上にこそ成り立つ!」と実感したことを機に、「防災収納」を実践し始めたという松永さん。

・「災害時でも普段食べ慣れている好きな物を食べられる」
・「非常食じゃなくてスーパーで手軽にそろえられて、コストが抑えられる」
・「アレルギーがあっても食べられる物を備えられる」
・「常に食べ物がストックされているので、心に余裕ができる」
・「普段食べている物なので、賞味期限切れを減らせる」

…と松永さんが挙げてくれたように、ローリングストックは何かとメリットも多い。

普段の生活で使用している物をストックしながら回していくという、日々の暮らしの延長線上にあり、誰でもすぐに始められるお手軽な防災術なのだ。

初心者も暮らしに取り入れやすい! 松永さん実践のローリングストック3カ条

普段の料理にも使いやすい点でも缶詰はローリングストックに適したアイテム

しかし、「『やってみたけど賞味期限が切れていた』『消費が大変だった』『気付いたら空っぽでした』という方もいて、うまく回していくのは難しいようです」(松永さん)と、意外と壁にぶち当たることも。そこで松永さんが実践するローリングストックのポイントを伺った。

<1>「好きなもの・食べ慣れたものを!」

「普段食べ慣れていない物は、非常時にはなかなか喉を通りません。スーパーなどですぐに購入できておいしい物。これが疲れずに続けるためのポイントです。とはいえ自分だけしか食べないような好みが分かれる物は、消費するのが大変なので、家族みんなが好きな物がいいです」

<2>「最低でも1週間はしのげる量を!」

「災害後1週間は物流がストップしたりして安定しません。最低でも1週間は自宅にこもれるように備えてください。食べ物なら3食×7日×家族分。水は1日1人3リットルを目安に、3リットル×7日×家族分で計算します」

<3>「賞味期限が早いものから取り出せる収納!」

「賞味期限の早い物から消費できるように、手前の物から取り出して、新しく購入した物は奥に入れるような “手前取り”できる収納を普段から意識すると賞味期限切れがなくなります。なお賞味期限は数カ月〜数年あると安心です。あまりに短いと消費するスピードが早くなるため、管理するのにも疲れてしまいます」

スーパーで買える! これだけはストックしておきたい必須アイテム

水は保存水と普通の物を合わせておくとローリングストックしやすい

またローリングストックを継続して行うこつの一つが「スーパーで気軽に買える物」を選ぶこと。「なかなか手に入らない物や高級品だと『もったいない』と思って気軽には食べられないですよね。これではローリングできない、ただの保存になってしまいます。また、減った時に気軽に購入できないのもデメリット。なので、スーパーやよく行くお店、ネットなどで気軽に買える物がおすすめです」(松永さん)

では被災した時のことを想定し、普段からどのような商品を買っておくべきなのか?

まず「命をつなぐために一番重要なもの」として挙げてくれたのが「水」。「飲料水はもちろんですが、赤ちゃん用のミルクやペットの水なども。水がないと脱水症、熱中症、エコノミー症候群の恐れもあります。常にストックがある状態にしておいてください。ただ、すべてをローリングストックするのではなく、長期保存水(10年など)と合算して考えましょう」(松永さん)

そして「日本人、米があればなんとかなる!」と松永さんが語る「米」。「ものすごく優秀な保存食です。パックご飯でもいいのですが、そんなに大量にはストックできないので、できればお米がおすすめ。カセットコンロなどの料理器具も忘れずに用意しましょう」とのことだ。

アルコール臭が強いロングライフパン、5分ほど置いてにおいを飛ばすとおいしくいただける

「ロングライフパン」というパネトーネ菌を使用した賞味期限が数カ月持つパンも、純粋においしいので、あるとうれしいのだそう。「食感はデニッシュ生地でやわらかく、カレーパン、チョコパン、メロンパン、クリームパン、クロワッサンなどいろんな味が登場しています」(松永さん)。多彩な味を楽しめるという点でも被災時の助けになってくれそう。

保存食の定番「缶詰」についても、「調理いらずで、開けてすぐ食べられるのが被災時にはうれしいですね。今はスーパーにもいろんな味が並んでいますし、値段も手頃。普段の食事にも使いやすいのが最大のメリットです」と、やはりプロにとっても活用度が高いようだ。

熊本地震で断水した際に数本しか水の備えがなく、隣町の親戚を頼って水を分けてもらったという松永さん。

「地震の時の食事でおいしい!と感じたものが、普段から食べているものでした。アルファ米などの非常食も食べたのですが、食べ慣れていないからか、または食欲がなかったからか、そんなに食が進みませんでした。食べ慣れた安心感って大事ですね」(松永さん)と語るように、実際に被災した経験が、今のローリングストック術に生かされているという。

もしもの防災術としてはもちろん、心細い時に安心感を与えてくれるという意味でもルーティンとしてローリングストックを取り入れてみてはいかがだろうか?

文=野宮ジュン

松永りえ

思考・モノ・防災の3つを整理して、暮らしの土台をつくる整理収納コンサルタント。 防災共育管理士、防災士、無印良品マニア。著書は3冊。セミナー、メディア、執筆など幅広く活動している。ブログは「良品生活」、Instagram(@mujikko_rie)のフォロワーは7万人を超える。

 
 

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